記事: Haut tricot(オートリコ)が2025年度グッドデザイン賞を受賞 ― アパレルブランドとして異例のプロジェクト評価
Haut tricot(オートリコ)が2025年度グッドデザイン賞を受賞 ― アパレルブランドとして異例のプロジェクト評価
ファッションの構造を変える挑戦。オーダーメイドニットブランドの “服づくりのあり方” そのものがデザインとして評価される
この度オーダーニット専門ブランドのオートリコがグッドデザイン賞を受賞しました。
単一のプロダクトやビジュアルとしてではなく、ブランド全体のプロジェクトとして応募し、そのビジネスモデルと取り組みの革新性が高く評価されました。
アパレルブランドが“プロジェクト単位”で同賞を受賞するのは全国的にも極めて稀であり、
ファッションにおける新しい試みとして認められました。

オートリコ独自の“今までにないモノづくりの仕組み”とは
アパレル業界では長年、大量生産・大量消費を前提とした「見込み生産モデル」が主流となっています。
多くの企業が分業制によるサプライチェーンに依存し、生産開始から販売までに半年から1年もの時間を要するのが一般的です。
その結果、過剰在庫が発生し、毎年供給される新しい衣類のうち半数以上が廃棄されているといわれています。
こうした実態に問題意識を抱きながらも、既存の構造から抜け出せず、根本的な解決には至っていないのが業界の現状です。
Haut tricotはこの構造に疑問を持ち、持続可能な新しい仕組みを模索。
その答えとして、ホールガーメントテクノロジーを用いた自社一貫生産体制を構築しました。(ホールガーメントとは、「洋服の3Dプリンター」と呼ばれる技術で 無縫製で1着丸々編み上げられる編機のこと)
ホールガーメントテクノロジーを導入させるブランドは多数存在しますが、
その多くは「無縫製の快適性」だけに着目し、大量生産の流れの中から抜け出せていません。
しかし、Haut tricotはその本質を「省人化・一貫生産」と再定義。
ホールガーメントテクノロジーを自社一貫生産の中枢として、仕組みに取り入れました。
その結果、これまで半年〜1年かかっていた生産リードタイムを約1ヶ月へと大幅に短縮。
在庫を持たない体制で、無駄のないサステナブルなモノづくりを実現しました。
環境への配慮と、顧客一人ひとりへの最適な提案を両立する、
新しい時代のアパレルブランドの形を築いています。

ブランドの成り立ち ― 背景にある想い
Haut tricotは、代表がアパレル販売員として働いていた際に、
業界に根付く「大量生産・大量廃棄」の構造を目の当たりにしたことをきっかけに誕生しました。
サプライチェーンの制約から抜け出せず、大量生産と大量廃棄を繰り返してしまう——。
この構造的な課題を解決するために、新しい仕組みのあり方を模索。
その中でホールガーメントテクノロジーと出会い、在庫を持たない持続可能なものづくりの形を実現しました。
「“服づくりの構造を変える挑戦”が高く評価される」
以上の取り組みに対して高い評価をいただき、今回の受賞に至りました。
審査員から寄せられたコメントを以下にご紹介します。
■審査員コメント
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「工業製品としての洋服づくりのあり方への疑問が根底にあり、製造工程からサプライチェーン全体に新たな考え方を提案する挑戦的なプロジェクトと言える。同時に「無縫製による着心地の良さ」だけではなく、56色展開、約20型をベースにサイズや柄なども選んで豊富なカラーと型のバリエーションを提供し、オーダーメイドとデザインを両立させた点で優れている。服を選ぶ消費行動そのものにも一石を投じる可能性がある。」(原文ママ)
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Haut tricotはこれからも、持続可能で豊かなファッションのあり方を探求してまいります。
ファッションが社会に対して果たせる役割を、これからもデザインを通じて問い続けていきます。









